小林市シルバー人材センター常務理事 牧野尚之さん

【インタビュー】宮崎県小林市シルバー人材センター×Frichの取り組み「地元を離れた家族が安心できるサービスに向けて」

高齢化が進む現代、日本の65歳以上の人口のおよそ6人に1人、約593万人が1人暮らしをしている。(※総務省統計局「平成27年国勢調査」より)宮崎県小林市では、65歳以上の高齢化率はおよそ35.7%にのぼる。地元を離れて住む家族にとって、高齢の親の見守りは大きな社会課題となっている。

「特にここ3年はコロナ感染の予防対策もあって、親子間でも行き来が難しい時代となっていますし、異常気象の影響で夏場の集中豪雨時期は、これまで経験しなかったような災害が発生しています。こうした災害時の見守り体制は、今後、行政機関ともしっかり連携しながら、安否確認、関係者への連絡などきめ細やかな対応が必要になってきます。」

こう話すのは小林市シルバー人材センター常務理事牧野尚之さんだ。シルバー人材センターの運営のとりまとめに腐心している。

「シルバー人材センターは、基本的に60歳以上の高齢者が共働、共助しあうことによって、自己の能力を生かして追加の収入を得たり、生きがいの充実、社会参加を希望する高齢者に臨時・短期・簡易な仕事を提供する自主的な団体です。昭和61年『高齢者等の雇用の安定に関する法律』が施行されてセンターの行う業務が法的に整備されました。雇用契約に基づく労働者ではなく、お客様と会員が請負や委任という形で個人事業主としてサービスを提供するのが基本です。また、派遣事業としてお客様の指揮・命令を受けて対応する機会も最近増えてきています。」

同センターの会員数は令和4年12月時点で、476名が登録、平均年齢は現在74.7歳だという。今までの経験、知識を生かして社会の役に立ちたいという気持ちの人が多いようだ。

草刈りや農作業のお手伝い

シルバー人材センターの取り組みが喜ばれ、活動にもやりがいが。

「小林市は畜産をはじめ、果樹・園芸農家が多いので、農作業の依頼がよくあります。他には買い物代行や病院の付き添い、お墓清掃などさまざまです。最も多いのは庭木の剪定や空き地の草刈りで、お盆前や正月前に剪定作業の依頼があった場合は、1か月~2か月待ってもらわないといけないほどなんです。」

1日の依頼数は平均すると14件ほど。そんな中、仕事を通じてやりがいを感じるときについて伺った。

「やはり、庭木の剪定や草取りでは、見違えるようにきれいに仕上げるとお客様から『ありがとう、こんなにきれいにしてくれて』といったお礼の言葉をいただきます。農作業関係の仕事もきつい仕事が多いのですが、会員さんたちが一生懸命取り組みますので、なくてはならない戦力だと喜ばれています。」

シルバー人材のこれからについて話す牧野さん

シルバー人材センターが、地域の課題解決のために活躍。

高齢化が進む中、地域では新たな課題に直面していると牧野さんは言う。

「超高齢社会の一人世帯、老老世帯では、ごみ処理や空き家の家財処分などにお困りの方が増えていますね。老親が亡くなり、家屋敷を相続しても子供さん方は都会に住んでいますから、田舎の不動産は処分したい。ただ、家財道具の処分とかごみ処分は、なかなか簡単にいかない。そこでセンターに依頼されるケースが増えています。」

実際に牧野さんの友人から相談があり、シルバー人材センターで対応したケースがある。

「お母さんが7年前に亡くなり、友人自身も脳梗塞になったことがきっかけで、家財分別作業の依頼がありました。友人は遠くに住んでいるため定期的に通うことが難しく困っていて、相談があったとき『力になりたい』と思いました。物がたくさんあり、3名体制で対応しても1か月近くかかりましたが、無事に終えることができました。友人は大変感謝しており、『シルバー人材センターがあって良かった』と言ってくれました。今後Frichとの取り組みでは、日頃から、地域密着型の仕事をさせていただいているシルバー人材センターならではのサービスが提供できるのではないかと期待しています。」

離れて暮らす高齢の親を心配する子は多い。地域密着型だからこそ、普段のちょっとした変化にも気づくことができ、みんなで解決できる糸口になるのではないだろうか。

※出典
平成27年国勢調査人口等基本集計 結果の概要