ネット上では「保険不要論」が目立ち、若者中心に保険で運用するのは意味が無いという人が増えている。また、最近では、保険を解約して新NISAで投資したい人が増えているらしい。
「貯蓄から投資へ」という国策の流れの中では、保険が果たすべき役割は少しずつ変わってきているのかもしれない。

さて、タイトルに対する結論を先に言うとこうなる。

福利厚生が充実している大企業従業員は、自社が加入する健保の付加給付制度や福利厚生制度をベースにした保険の見直しにより、新NISAの方にかなりの資金を傾けられるのではないか。

以下、細かく見ていこう。

相場は上下する

新NISAは、基本的には長期での資産形成を前提とした制度である。そのため、目標金額に到達するには長い時間がかかるのが前提だ。
相場が右肩上がりなら良いのだが、利益が出る時もあればそうでない時もある。時には数万円の出費がいたい時や、子供の学費などで羽が生えたかのようにお金が飛んでいく時などもある。

これから利益をあげようという人にそんなことを言っても刺さらないとは思うが、攻撃と防御は表裏一体。どちらか一方に比重をおきすぎることなく、長期的な視野に立ってバランスを保ったポートフォリオを用意しておくことは決して意味のないことではないと思う。

大事なのは、新NISAで攻めたい人にとっては、保険等は「必要最低限」で良いということだろう。

保険を見直す3つの観点

保険を見直すなら、以下の3つの観点をお勧めしたい。

①公的保険

そもそも日本の社会保障は世界トップレベルである。また、保険業を監督する金融庁自らが公的保険の啓発サイトをつくっているほどなので、それを理解しないことには「最低限の保障」とは何なのかが定まらない。

ケガや病気などの日常生活における様々なリスクに備えるための手段である保険には、大きく分けて公的保険と民間保険の2種類があります。国が運営する公的保険は原則として強制加入である一方、保険会社が運営する民間保険は任意加入となります。民間保険は公的保険を補完する面もあることから、公的保険の保障内容を理解したうえで、必要に応じた民間保険に加入することが重要です。

金融庁「公的保険ポータルサイト」より

以下に公的保険と民間保険の対照表があるが、例えば、ケガ・病気というリスクに対しては、「医療費3割負担」に代表される公的医療保険がある一方、民間保険では傷害保険(ケガの保険)や医療保険、がん保険がある。

金融庁資料

新NISAやiDeCoに積極投資したい人とっての「保険不要論」は公的保険との関係で語られることが多い。ポイントは、「公的保険と重複しない・自分にとって本当に必要だと感じられる民間保険等」とは何か?ではないかと思う。

ここではその検討を進めるガイド役として、次からの2点を挙げたいと思う。

②福利厚生制度

公的保険をベースに自分にとって必要な補償のイメージがつかめた人にとって、民間保険への加入を検討する前にぜひ調べてもらいたいものがある。それが所属する会社の福利厚生制度だ。

福利厚生制度と言っても具体的なメニューについてはピンとこない方の方が多いかもしれない。だが実は、会社は従業員のために保険的なものを提供していることが多い。その代表例が以下の3つだ。

1)慶弔見舞金

傷病時や災害に遭ったときなど万一の時に会社から一定のお見舞金等がもらえる制度。読者の方には、傷病時や災害時のお見舞い金こそないが、「結婚祝い金」や「退職餞別金」などを実際に受け取った方もいるのではないだろうか?

ただ、もらえる金額は3万円(多くても10万円)程度なので、本当に「必要最低限」の金額だ。民間保険のように万一の備えとするには金額的に心もとない。

結婚祝い金30,000円
出産祝い金30,000円
入学祝い金10,000円
傷病見舞金30,000円
災害見舞金30,000円
死亡弔慰金30,000円
退職選別金10,000円
(慶弔見舞金の例)


2)「付加給付」

大企業には「付加給付」という制度がかなり充実している。ここは万一の備えとして十分活用できるだろう。

付加給付とは、大手企業などの健康保険組合において、あらかじめ定めておいた1ヶ月間の医療費の限度額を超過した場合、その費用を払い戻す制度のこと。内容は健康保険組合ごとに異なる。

たまに「うちは〇〇健保なので福利厚生はしっかりしている」という言葉を聞くが、その理由にはこの付加給付がある。

以下の表をみてわかるとおり、どんなに医療費を支払っても一定額に収まるような優しい仕組みがあり、また、万一働けなくなった場合であっても、傷病手当金の上乗せや期間延長などがしっかり組み込まれている。

法定給付付加給付
病気やけがをした医療費の7割
(70歳~74歳は8割または7割)
自己負担は最大2.5万円
(被保険者が1ヵ月に支払った合計額25,000円を控除した額を支給)
高額療養費所得区分に応じた法定自己負担限度額を超えた場合、その超えた分を高額療養費として支給自己負担は最大2.5万円
(自己負担限度額から、25,000円を控除した額を支給)
傷病手当金休業1日につき標準報酬日額の
・2/3 相当額
・1.6年間
支給
・標準報酬日額+10%/日を支給
・傷病手当金支給終了の翌日より、標準報酬日額の70%/日を支給(法定給付期間が3年を超えた場合は対象外)
出産育児一時金・産科医療補償制度加入医療機関 500,000円
・産科医療補償制度未加入医療機関 488,000円
1児につき50,000円
大企業の主な付加給付例(上記はイメージのため簡素化しています)

例えば、高額療養費制度について考えてみよう。高額療養費制度は、医療費の窓口負担が「自己負担限度額」を超えた金額があとから払い戻される制度だ。

年収500万円の人が高額療養費制度適用となった場合、以下のテーブルにもとづいて自己負担限度額が設定される(下表の場合 87,430円/月)のだが、「付加給付」を活用すれば更に自己負担限度額が低くなって、自己負担限度額は 2.5万円になる。

年収自己負担限度額/月自己負担限度額
1160万円以上252,600円 +(医療費-842,000円)×1%254,180円
770万~1160万円167,400円 +(医療費-558,000円)×1%171,820円
370万~770万円80,100円 +(医療費-267,000円)×1%87,430円
370万円以下57,600円57,600円
住民税非課税者35,400円35,400円
高額療養費制度による自己負担限度額のイメージ(右列は医療費支払いが100万円のときの自己負担限度額)

出典:全日本空輸健康保険組合

3)共済会

JTC系の企業に多いのだが、社員相互扶助のための共済会という組織もある。先ほど述べた慶弔見舞金や各種レジャー費用の支援などがある。
なお、大企業でなくとも、中小企業を束ねる共済会に参加することで、共済会のサービスを享受している中小企業などもある。
共済会については、慶弔見舞金程度の支援がメインなので、やはり「必要最低限」の金額であり、民間保険のように万一の備えというには心もとない。

出典:一般財団法人更埴地域勤労者共済会

③保険料控除

とはいえ、公的保険との重複など面倒な検討をしたくない人もいるはず。そんな人にとっては、保険料控除の範囲内で保険を検討するといいかもしれない。シンプルに「おトク」に民間保険に加入する手段である。

保険料控除とは、毎年1月1日~12月31日までに支払った生命保険料のうち、一定の金額が保険契約者(保険料負担者)のその年の所得から差引かれる制度のこと。
課税所得が低くなることで、所得税(最大12万円)や住民税(最大7万円)の負担を軽減することができる。

<保険料控除の例>

(前提)
・課税所得 330万円以上 ~ 695万円未満
・控除上限の20,000円/年の生命保険料を支払った
・新制度が適用される

(1)所得税軽減額

20,000円×20%=4,000円

(2)住民税軽減額

(20,000円×1/2+6,000円)×10%=1,600円

以上より、生命保険料控除による節税効果は、 5,600円 となる。

20,000円の保険料に対して5,600円の節税効果があるということは、「28%おトクになった」と考えることもできるので、保険料控除をうまく活用することによって、保険におトクに加入することは十分可能だと言える。

出典:家計の窓口

団体保険による割引の検討も

ここまで読んで「いやいや保険というのは、発生頻度こそ低いが貯金では賄えないような大きなリスクに備えるものだ。お見舞金や付加給付などはその代替になるものではない」と考える方もいるだろう。それはそのとおり。特にお見舞金などは保険とは異なるものだ。

そのような方には是非、所属する会社・団体が扱っている団体保険の検討をお勧めする。団体保険は、あなたが所属する会社・団体が保険会社の一部業務を担っているため(保険料徴収などの事務を保険会社に代わってになっている)、保険会社のコスト削減を通じて保険料が割り引かれる仕組みになっている。

企業によっては保険料がなんと30%程度も割引かれる場合がある。

ちなみに「保険を見直す」を「保険料をなるべく安くする」という観点からだけで評価すると以下のイメージとなる。

なお、保険料が安くなれば、懐具合はもちろん改善するけれども、今までと同水準の保障が得られるか、浮いた資金の一部または全部を将来の備えとして貯金・投資できるか、などをしっかり検討すべきなのは言うまでもない。

大企業従業員は福利厚生をうまく活用したい

このように考えると、福利厚生が充実している大企業従業員は、自社が加入する健保の付加給付制度や福利厚生制度をベースにした保険の見直しにより、新NISAの方にかなりの資金を傾けられるのではないかと思う。

補償内容の重複図

中小零細企業の従業員は、まずは付加給付の有無を確認

一方、中小零細企業の従業員は、自分の所属する会社・団体の健康保険において付加給付があるか、慶弔見舞金の具体的な内容、共済会の有無などを確認したうえで見直すことからスタートすることになるだろう。

フリーランスなどが加入する国民健康保険には、残念ながら「付加給付」に相当するものはないので、民間保険などに加入することなく大企業並みの保障を得ることは難しいと思われる。


ちなみにFrichでは、「大企業並みの保障を中小零細企業にも」というコンセプトで、付加給付に似たサポートを提供できるようにパッケージ商品を用意している。

あなたの会社がFrichを導入すれば、新NISAむけの余裕資金を確保しやすくなるかもしれないし、会社にとってみれば保険料等の見直しを通じて従業員の「手取り」を増やすことができるかもしれない。

自分の会社でぜひ導入したいという方がいらっしゃれば、このページのURLを総務担当者の方に転送していただければ幸いです。

なお、ご興味のある方はこちらに直接お問い合わせください。