ペット探偵トランペット古谷昂大さんインタビュー

【インタビュー】株式会社O.K.LOGIのペット事業とFrichの共同開発「みんなで探す、ネコ捜索あんしんサービス」がリリース。ペット失踪の実態と捜索にかけるペット探偵の想いとは?

新型コロナウイルスによってさまざまな巣ごもり需要が広がりを見せたが、なかでもペット需要の拡大は周知の通り。ペットは癒しと幸せを与えてくれて、いつもそばにいるのがあたりまえの存在だ。しかしちょっとした不注意で迷子になったり失踪したりすることがある。

「意識して防げることなんですが、うっかり窓を閉め忘れることもあります。飼い主さんがどれだけ気を付けられるかがとても重要なんです」

こう話すのは株式会社O.K.LOGIの古谷昂大さん。迷子ペットの捜索を手助けするサービス『ペット探偵トランペット』で、猫を中心に失踪したペットを見つけるスペシャリストだ。

「当社は配送業をメインにいろんな事業を展開しているんですが、以前ペット関連の仕事をしたときにペット失踪の実情を知って、多くの飼い主さんが困っている姿を目の当たりにしたんです。そこから猫ちゃんと飼い主さんを救いたいという想いでペット探偵の事業を始めました」

ペット探偵という業界自体がまだ認知度として高くないと言う古谷さん。しかし、失踪に関する相談件数は月に150〜200件も寄せられるというから驚きだ。ペットの種類や性格、逃げ出した状況などをヒアリングして捜すのだが、捜索の現場では体力も必要なのだとか。

「ペットの捜索は、ひたすら歩き続けて根気強く捜す仕事なんです。当社は配送事業があることから体力自慢の人材が多いんです。自衛官や水泳のインストラクターといった経歴を持つスタッフもいますよ」

迷子になった猫ちゃん

ペットが失踪して時間が経てば経つほど事故につながるリスクが高くなる。

ペットが失踪してから数時間で相談してくるケースは少ないという。では一体どの程度の時間が経過して、こうしたプロに捜索を依頼するのだろうか。

「失踪してから1〜2日くらいは飼い主さん自身で捜すことが多いんです。なかには1ヶ月くらい経ってからご依頼をいただいたこともあります。そのうち帰ってくるだろうと考える方も少なくありません」

しかし、古谷さんは1日でも早く相談をしてほしいと続ける。

「室内飼育の場合、失踪場所から半径70~80mで見つかることが多いのですが、数日経つとその範囲を超えてしまうこともあるんです。外には危険がたくさんあって、他の猫ちゃんと喧嘩して追い回されたり、車が介在したりするケースもあります。時間が経てば経つほど事故につながるリスクが高くなるんです」

日を追うごとに発見は難しくなる。捜索エリアの広さのみならず、さまざまな仮説も交錯して捜索の難易度は何倍にも膨れ上がるのだ。また、病気を持ち帰ってしまうケースもあるという。

「まずはご相談だけでもしてほしいなと思います。飼い主さんは気が動転していて、冷静に判断できないこともありますので」

ペット捜索にかける想いを語る古谷さん

1日のほとんどをペットの捜索に。『総力戦』で大切な家族を見つける。

ペット捜索は夜間に行われる。日中に比べ、人や車の動きが少なくなるため猫が活動しやすくなるからだ。そしてもうひとつ大きな理由がある。

「日中は飼い主さんも捜していることが多いんです。そのため捜索が難しい夜間を私たちが対応しています」

飼い主が捜せない時間帯をプロが集中的に稼働することで、1日のほとんどを捜索できるという。大切な家族を見つけるために、まさに総力戦で発見につなげるのだ。また捜索にはいくつか道具も用いられる。

「失踪現場付近の地図を見ながらライトで捜すんですが、人力だけでは限界があるので猫ちゃんが隠れそうな場所にカメラを設置します。捜索時には見つけられなくても、カメラに映り込むことも多いですよ」

カメラに映った姿を見れば飼い主も胸を撫で下ろすだろう。こうした手がかりをできるだけ集めることで発見の可能性が上がるのだ。

「情報収集はとても重要です。日中は付近の住民の方にチラシを配布して目撃情報を集めて、それをもとに猫ちゃんがいそうな場所を絞り込んでいくんです」

猫が入り込む場所は家屋の軒下や物置の隙間なども多い。家主の許可なく立ち入れない場所にいることから、事前にチラシを配ることで捜索や保護の協力にも理解が得られる。

捜索に使用するカメラ/迷い込んだ猫/ペット探偵トランペットのロゴ

個体差や性格、周辺環境や天候も違う。ペット捜索に二つとして同じケースはない。

ペット探偵は、一見捜索ノウハウを駆使して捜しているように思えるが、相手は生き物。そう簡単にはいかないらしい。

「過去の事例や動物の行動学を基に捜索しますが、それが毎回通用するわけではないんです。猫ちゃんの個体差や性格もありますし、周辺環境や天候などの状況も整理して、最善の策を考えなければならないんです」

たとえば雨が降った場合、猫は身動きが取れなくなるため遠くへ行く心配がなくなるのだという。また他の猫のマーキングが雨で流されると、天候回復後は警戒心がなくなって動きも活発になると古谷さんは語る。

「そのタイミングは目撃されやすくなる絶好の機会なんです。天候回復の前にチラシを配っておくことで、情報が集まりやすくなるんです」

また、なかには短期間で見つけなければならない緊急性の高い依頼もあったという。

「持病を持った猫ちゃんの捜索なんですが、定期的に病院で点滴を受けていて、次に点滴を打つのが2日後に迫っていたんです。飼い主さんにもご協力いただいて、なんとか保護して病院へ連れて行くことができました」

ペット捜索に二つとして同じケースはない。多くの状況判断と周囲の協力、そして何より見つけ出す強い執念を持つことが大切なのだ。

撫でられて安心する猫ちゃん

私たちとしては、ペットを捜し出して“救える命がひとつでも多くなれば”という想いです。

幸い発見することができれば、いよいよ保護となる。しかしそれには細心の注意が必要なのだという。

「捕獲機を使用して安全に保護します。というのも逃げ出してしまった猫ちゃんは、数日間慣れない外で過ごしていて相当な緊張状態なんです。飼い主さんが名前を呼びかけても返事をしないこともありますので、懐いている子でも手で捕まえて保護することはほとんどないんです」

飼い主の心配もさることながら、離れてしまったペットが感じる不安は計り知れないことがうかがえる。こうして数日に及ぶ地道な捜索が実を結び、ようやく飼い主との再会を果たすことができるのだ。

「やっぱり無事に飼い主さんの元へ届けられるときは一番うれしい瞬間ですね。喜んでいる姿や、感謝の言葉をいただけるとやっていて本当によかったなと思います」

と優しく笑う古谷さん。こうしたペットや人を想う気持ちが解決に結びついているのだろう。失踪したペットを見つけるのにプロの手を借りることは、大きな助けになるのは間違いない。しかし一方で捜索にかかる費用で依頼を断念する人も少なくないという。

「費用面で断念される方もおられます。ただ、失踪してしまった猫ちゃんが飼い主不明で最悪の場合殺処分されてしまうこともあるんです。Frichさんとの取り組みは、ペット探偵にご依頼できない方々が利用できる仕組みなので、私たちとしては救える命がひとつでも多くなればという想いです」

優しい笑顔の古谷さん

失踪したペットの捜索は100%発見を保証できるものではない。これは相手が生き物であることから多くの人が理解していることだろう。しかし古谷さんは、どれだけ飼い主の気持ちに寄り添えるかが大切だと語る。

「飼い主さんにとっては見つかるか、見つからないかのどちらかしかないので、0か100なんです。これを常に100を目指してやっていかなければと思っています」

『ペットは家族』とよく言われるが、何かの拍子にその家族が離れてしまうことがある。心配する飼い主を幾度も見てきた古谷さんは、誰かが一緒に捜してくれるだけでも少しは気持ちが救われるのだと話す。

離れてしまった家族を見つけるために、再会の喜びのために、ペット探偵は今日も捜し続ける。